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▼『中医臨床』
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脾胃は全身をコントロールする要 【特集】脾胃の調理を再考する
中医学では一般に,脾胃は「後天の本」であり,胃は受納を,脾は運化を主り,「一納一運」で,両者が密接に協力して水穀を化して精微とし,気血津液を化生して全身に供給するとされる。脾の病では,陽気虚衰のため運化機能が失調し,そのため水湿や痰飲が内生して起こる病証,あるいは統血機能が失調して起こる出血病証がよくみられる。また胃の病では,受納機能や腐熟機能の障害や胃気上逆の病変がみられる。そして,①脾気虚証,②脾陽虚証,③中気下陥証,④脾不統血証,⑤寒湿困脾証,⑥脾胃湿熱証,⑦胃陰虚証,⑧食滞胃脘証,⑨胃寒証,⑩胃熱証などの証型があげられている。
こうした中医学の理解を踏まえたうえで,本特集では改めて「脾胃の調理」にスポットを当て,胃腸疾患以外の病であっても脾胃を調理することが大切であることを示したい。脾胃は中央にあって全身の気機の昇降をコントロールする枢軸だからである。 |
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薬・針・外用薬を用いた咽喉の病の治療 【特集】中医喉科~特色溢れる中国伝統医学の治療~
咽喉の病の治療の歴史は古く,『素問』には「喉痹」の記載が複数箇所にみられ,すでに治療の対象になっていた。しかし中医喉科という専門科目として扱われるようになるのは宋代以降である。さらに中医喉科の体系化が進むのは明代以降で,最盛期を迎えるのは清代である。その背景には,白喉(咽頭・喉頭ジフテ リア)や爛喉痧(猩紅熱)などの急性感染症の流行があった。特に江南地域では疫病が頻発し,そのことがこの地域の医家に咽喉の病の治療経験を積ませることになり,咽喉治療の理論や処方の発展を促した。
今回の特集では,今春取材した江西省旴江に息づく謝氏喉科の6代継承者・謝強先生のインタビューおよび慢性咽頭炎治療をはじめ,現代中国を代表する耳鼻咽喉科の老中医・干祖望先生の慢性咽頭炎治療。さらに名老中医による喉頭炎の治療,そして咽喉科で用いられてきた外用薬「吹薬」の歴史的変遷などを取り上げる。 |
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中医学の難治性婦人科疾患治療はどこまで来たか 【特集】難治性婦人科疾患の中医治療
婦人科はさまざまな診療科のなかでも漢方薬が頻用される分野で,月経不順や月経痛,PMSや更年期障害などでは,当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸などが日常的に処方され,実際に有効性を発揮している。こうした疾患や症状に対する漢方治療はすでに多くのところで取り上げられているので,今回の特集では,西洋医学的な治療が奏効しない,あるいは奏効しにくい難治性の婦人科疾患に焦点を当てる。特に多囊胞性卵巣症候群(PCOS)と早発卵巣不全(POF)について重点的に取り上げる。
まず別府正志先生に西洋医学的に難治と思われる婦人科疾患の中医学治療の概略について,ご自身の考え方を紹介していただき,次にPCOSとPOFについて中国の経験を紹介する。それぞれの疾患に対し,現在の中国でどのような治療が行われているかを示すほか,朱南孫,肖承悰,夏桂成といった現代中国の名中医の具体的な治療についても詳しく紹介する。
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中医学のアレルギー疾患治療はどこまで来たか 【特集】アレルギー疾患の中医治療
アレルギー疾患の患者数は増加しており,わが国の全人口のおよそ2人に1人が何らかのアレルギー疾患に罹患しているといわれている。近年,アレルギー疾患の発症機序や悪化因子等の解明が進み,新たな治療薬や治療法が開発されるなどしているが,依然として根治に至らず長期的な対症療法を余儀なくされている患者も多い。本特集では,このような現状において漢方や中医学がどのように活かされ,何が期待されているのかを探る。
特集では,まず膠原病・アレルギーを専門にする滝沢健司医師に,わが国におけるアレルギー疾患に対する現代医学的治療と漢方治療の現状について紹介していただいたうえで,中医学ではアレルギー疾患をどう捉えどのように治療しているのかについて解説していただいた。さらに,臨床報告として木田正博医師に環境や生活習慣といった現代社会的要因に着目したアレルギー疾患の治療例を報告していただいた。
中国からは,中医学におけるアレルギー疾患治療の具体的な進め方について北京の仝小林氏の論文を,さらに北京の王琦教授の中医体質学の観点を加味した湯液治療ならびに針灸治療に関する論文をそれぞれ翻訳して掲載した。
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「雑病治療の祖」朱丹渓の医学に学ぶ 【特集】丹渓医学
現代中医学の直接のルーツは金元医学にあるといわれる。朱丹渓はそれを代表する一人だ。丹渓の医学の特徴は,大きく〈1〉気・血・痰・鬱の「四傷」学説,〈2〉「陽は余り,陰は足らず」説,〈3〉相火論の3つを提唱したことにある。特に陰精の虧損を重視し,滋陰降火法を創出したことから「滋陰派」に列せられる。
特集では,丹渓医学とはどのようもので,現代にどのように活かされているのかを探るため,朱丹渓の故郷・義烏と,丹渓医学の研究拠点がある杭州の現地取材を実施。
丹渓医学の学術研究の中心地・浙江省中医薬研究院の盛益秀教授には,朱丹渓の主要な医学思想の概要とそれが形成された背景,用薬の特徴,丹渓学派の系譜などについて話をうかがった。さらに丹渓医書を出典とする処方を運用した盛教授の経験として,二妙散・痛瀉要方・大補陰丸・越鞠丸の応用例を紹介した。
また朱丹渓から数えて22世代の子孫にあたる朱鋭明教授(義烏市中医医院)には,地元・義烏における丹渓医学の継承の様子などについて話をうかがった。
さらに丹渓医学は中医学の形成に多大な影響を与えただけでなく,わが国の伝統医学にもその影響が及んでいる。後世派の祖・曲直瀬道三の代表作とされる『啓迪集』には『玉機微義』『医学正伝』『丹渓心法』など丹渓学派の著書からの引用が非常に多く,曲直瀬流の医学を丹渓学派の流れを汲むものと位置付けることもできる。そこで,曲直瀬流医学の伝承に詳しい二松學舍大学の町寿三郎先生に,丹渓医学が曲直瀬流医学にどのように取り入れられ,広がっていったのかについて寄稿していただいた。
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温病を融合した紹興の『傷寒論』 【特集】傷寒と温病の統一 ~紹派傷寒~
『傷寒論』はすべての外感病の治療書であるが,傷寒に詳しく温病については簡略であったため,後世,その不足を補う形で温病学が発展したとされる。温病学では衛気営血弁証や三焦弁証といった温病治療のための新しい方法論が提起されたが,張仲景の打ち立てた六経の枠組みのなかで温病を含むすべての外感病の治療方法をまとめたのが「紹派傷寒」であった。そのため傷寒と温病の統一を果たしたとされる。
特集では,今春取材した浙江省紹興の取材記事と,紹派傷寒の治療経験を抜粋して掲載した。取材記事では,紹派傷寒を専門に研究している紹興市中医院の沈元良教授に紹派傷寒の特徴や現代中医学に与えた影響などについてお話をうかがった。また,紹派傷寒は中国江南地域に位置する紹興の風土や環境の影響を強く受けて発展してきた医学流派である。そこで越医文化を専門に研究している紹興市中医院の沈欽栄教授に,越医隆盛の背景となった越文化の特徴や,紹興が生んだ医界の巨人・張景岳についてお話をうかがった。
紹派傷寒は,張景岳の『景岳全書』傷寒典を端緒に,兪根初の『通俗傷寒論』で基礎が築かれ,その後,浙江省紹興の地の医家がその医学を継承・発展させていった。紹派傷寒の医家は数多くいるが,ここでは紙幅の都合で,沈元良主編『紹派傷寒名家験案精選』(中国中医薬出版社・2016年刊)より,張景岳・何廉臣・祝味菊・曹炳章・徐栄斎の医案を取り上げ紹派傷寒の臨床の一端を紹介する。
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単に補うだけでない補剤の中身 【特集】補剤を再考する
中国伝統医学は西洋医学のように病因を取り除く(瀉法)だけでなく,人体の不足を補う(補法)ことによって治療する方法をもつ点に大きな特徴がある。具体的には正気の不足である虚証を改善する補益薬を主体にした補剤を有する点である。
補剤は正気の不足を改善する方剤であるが,各補剤の組成を見てみると単に「補う」だけの生薬から成っているわけではないことがわかる。たとえば,補気の基本方剤である四君子湯には滲湿の茯苓が,補血の基本方剤である四物湯には化瘀の川芎が,補陰の基本方剤である六味地黄丸や補陽の代表方剤である八味地黄丸には滲湿の沢瀉・茯苓,涼血の牡丹皮が含まれ,いずれも補法のなかに瀉法が含まれており,補いながらも邪を留まらせない工夫が凝らされている。一口に補剤といっても,単に補うだけの薬だけでは十分には補えず,異なる働きをもつ生薬と組み合わせることで,病態に合った働きをしている。
そこで特集では,
〈1〉方剤解説:方剤の構成生薬をつぶさに観察すると,中医理論にもとづく「組み合わせの妙」が浮かび上がってくる。代表的な補剤について,菅沼栄先生に解説していただいた。
〈2〉理論解説:補益法による内傷病の治療は,歴史的に温補派がその理論を深化させ,用薬法を発展させてきた。薛己・張景岳・趙献可を取り上げ,小金井信宏先生にその理論や方法について解説していただいた。
〈3〉がんと補剤:発がんの基礎は正気の不足と考えられているため,がん治療の多くで補剤が使用されている。がん治療で使われる補剤について,鄒大同先生に中国における最近の研究動向を中心にレビューしていただいた。
〈4〉臨床上のポイント:臨床において補益法を用いる際のポイントや注意点などについて,木田正博先生に成書を引用しつつご自身の考えを交えて紹介していただいた。
〈5〉補薬解説:補剤の主薬となる補薬について,陶惠寧先生に解説していただいた。
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『金匱』を読んで伝統医学の発想を丸ごと知ろう! 【特集】『金匱要略』を読もう
『金匱要略』は「傷寒・金匱」と並び称され,『傷寒論』と一体不可分の最重要経典の一つとされている。それにもかかわらず,日本では『傷寒論』ほど熱心に読まれてこなかったのはなぜだろうか? 一方,中国においても,『金匱』は『内経』『傷寒論』と並ぶ重要経典として位置付けられており,現代の大学教育においては『金匱』を専門にした課目があるほか,各地には『金匱』を専門に扱う研究室もある。一般に日本においては「中国では経方は軽視されている」とみる向きもあるが,教育の広がりと研究の厚さはやはり侮ることができない。
そこで本特集では,現代中国における『金匱』研究の第一人者である故・何任先生の娘であり学術継承者でもある何若苹先生と,若い頃から長期に渡って学術秘書として何任先生のもとで学ばれた范永升先生(前・浙江中医薬大学校長)に,何任先生の学術を総括していただくとともに,その学統がどう継承されているのかについてお話をうかがったので,そのインタビューを掲載した。
一方,日本からは『金匱要略も読もう』の著者・髙山宏世先生に『金匱』の魅力や学び方についてお話をうかがったインタビューを掲載した。このなかでは「『金匱』が『傷寒論』に比べて熱心に読まれてこなかったのはなぜか?」という問いかけに対しても,先生の見解をお示しいただいた。もちろん日本において『金匱』が読まれてこなかったわけではない。特に近世(江戸期)においては優れた注解書も出ており,これらは当時の日本の医療水準が高かったことを物語っている。こうした日本における『金匱』受容の背景を押さえておくために,小曽戸洋先生に江戸期の重要文献を紹介していただいた。
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鍼灸と漢方をともに活かす 【特集】聴覚障害の中医治療
難聴は障害部位によって,外耳や内耳の障害による①伝音難聴と,内耳の感覚細胞から大脳まで音を感知する神経の障害による②感音難聴,さらにその両方の障害を伴う③混合性難聴の3つに大別される。
漢方では,伝音難聴では反復性中耳炎の予防面で,感音難聴では突発性難聴・耳鳴など,また聴覚症状に随伴して起こることの多いメニエール病などに対して使われることが多い。耳局所だけでなく,患者の証に応じた全体を治療することで現代医学治療にない効果を発揮する点は,他領域と同じである。また耳は五臓すべてと密接に関係していることも重要なポイントである。
本特集では,金沢大学附属病院 漢方診療科の小川恵子先生にインタビューを行い,わが国における難聴に対する漢方治療の現状やご自身の臨床についてお話をうかがった。標準治療が確立されている耳科領域だが,漢方だからこそできる役割のあることが明確に示された。また,耳疾患は鍼灸が奏効することの多い領域でもある。近年,特に耳管開放症の鍼灸治療に力を入れ,手応えを感じているという藤井正道先生に,本症に対する治療経験をまとめていただいた。中国においても難聴の中医治療の経験が積み重ねられており,特に中医耳鼻喉科学の第一人者である南京の干祖望先生の経験に学ぶ意義は深い。その他,朱良春先生,李振華先生,秦亮甫先生,路志正先生といった現代中医を代表する老中医の経験についても紹介した。
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中医学の智恵を日本にどう活かすか 【特集】皮膚疾患の中医治療
皮膚病に対する中医の認識は局所に限定せず,体全体に着眼した点が特色であり,多くの皮膚病は,整体病変が引き起こしたか,整体機能の異常が関係していると考えている。そのため治療においては,他科疾患と同様に弁証論治が重視されるが,皮膚病では病変部位を視認できるため,「皮膚症状と体全体を結びつけた診断」という皮膚病特有の観点を有することが中医皮膚科学の大きな特徴である。
治療方針は,大きく(1)慢性の皮膚病には瘀を治療する,(2)去邪では邪に出口を与える,(3)養血滋陰で乾燥肌を潤す,(4)健脾益腎法を用いる,(5)調和気血法を用いる,(6)調和陰陽法を用いる,といった点から進められることが多い。
特集の冒頭では,北京で現代の皮膚科名老中医・朱仁康氏に師事した経験のある平馬直樹先生に「中医皮膚科学の智恵を日本の臨床にどう活かすか」をテーマにお話をうかがったインタビュー記事を掲載。皮膚病に対する弁証論治の進め方をわかりやすく解説していただいた。総論では楊達先生に皮膚病に対する診断手順と治療について総合的にまとめていただいた。中国の名老中医の経験としては,広東省(嶺南地域)と四川省それぞれを代表する中医皮膚科名医の経験を翻訳掲載。広東省からは補腎法を重視する禤国維教授の学術と臨床経験,四川省からは皮膚病変でよくみられる紅斑鱗屑性の皮膚病に対する艾儒棣教授の治療経験を紹介した。
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