本号の主な内容
【特集/黄連と黄連解毒湯の使い方】
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■黄連と黄連解毒湯を使いこなすための徹底特集
■冬に備える予防薬――上海の風物詩「膏方」
■針灸特別企画◎李世珍先生の鍼に迫る
■新連載◎老中医の鍼に学ぶ――孫学全の補瀉手技
■特別寄稿◎中医学発展史における学派の役割
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目次
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【特集/黄連と黄連解毒湯の使い方】
* 黄連解毒湯・精熱解毒薬の代表方剤(小金井信宏)
* 黄連・三黄・黄連解毒湯(干祖望)
* 黄連の品種と炮製,効能(鄭金生)
* 黄連解毒湯はどのような疾患に応用されるか(孫立亭)
* 膈を衷心とした苦味清熱剤への考察(前田康男)
* 唐辛子皮膚炎と黄連剤に関して(渡辺善一郎)
* 黄連を含むエキス剤の応用鑑別とポイント(林賢濱)
・特別企画/李世珍先生の鍼
・愛媛中医学研究会10周年記念大会に参加して(伊藤和真)
・李世珍先生の鍼灸から何を学ぶか(越智富夫)
・経穴の効能と応用(李伝岐)
* リポート/第16回 日本中医学研究会――梔子豉湯について
(有馬俊裕)
* 弁証論治の実力アップコース<5>鬱証の弁証治療(劉桂平)
* 系統中医学講座ダイジェスト<第1回>
東洋医学の特徴と中医学的生体観(仙頭正四郎)
* 研究会便り/医学生たちの漢方医学研究会(加島雅之)
* シンポジウム/中医学は伝統医学の共通言語
* 興味深い論文/中医学発展史における学派の役割
* 冬に備える予防薬/上海の風物詩「膏方」(藤田康介)
* 針灸質問コーナー
1/足三里の補瀉(呉澤森)
2/百会穴の正しい取穴法(呉澤森)
3/刺針の深さは(王財源)
4/知熱灸と隔物灸について(福島哲也)
* 弁証論治トレーニング<32>男性不妊症
・回答へのコメント(呉澤森・高橋楊子)
* 中医鍼灸学を臨床に活かすために<12>初級から中級へ
(金子朝彦)
* 鍼灸臨床研修日記<1>「中医研診察室」のカンファレンス/
慢性腰痛と肺炎(大谷泰弘)
* 針灸症例/四風穴による耳鳴りの症例(早川敏弘)
* 中医針灸/臨床入門講座<6>(呉澤森)
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温故知新/老中医の鍼灸に学ぶ<1>補瀉と補瀉手技(孫学全)
* 浅川要先生の前号記事への返書(池田政一)
*―*―* ここに注目! *―*―*
87号:昨年9月,李世珍先生と李伝岐先生を中国から初めて迎え,愛媛県松山市で講演会を開催した愛媛中医研・越智富夫先生の「李世珍先生の針灸から何を学ぶか」。松山で講演した李伝岐先生の講演原稿「経穴の効能と応用」を掲載。同講演会に参加した明治鍼灸大学研修生・伊藤和真氏の「愛媛中医学研究会10周年記念大会に参加して」。
88号:今回の李世珍先生を迎える企画の最初の提案者であり,事務局を統括されている白川徳仁先生(東京・呼泉堂)の「李世珍先生の鍼を追試して」。李世珍先生の針の特徴を非常に明快にとらえている。日本の臨床現場での価値を捉えた画期的な文章。針灸師の必読文献。
「李世珍先生の補瀉手技について」(東京臨床中医学研究会 新国 豊)
89号:7月の東京・大阪の講演会を控えて,事前の勉強会が各研究会で開かれているが,そのような勉強会の1つを取材。
藤田康介氏の「冬に備える予防薬――上海の風物詩『膏方』」 |
みなさんは「膏方」というものをご存じだろうか。生薬を繰り返し煎じて濾過したシロップ状の濃厚な内服薬だ。冬を迎える11月ごろから,予防薬として中医師に処方してもらって飲む習わしがあるという。中医師たちもこのころは大忙しらしい。長く中医学とつきあってきたが,このような習慣があるとは知らなかった。興味深い上海の風物詩だ。
藤田氏は,現在上海中医薬大学本科に留学中の4年生。今年9月に大学院に入るという。小金井信宏氏についで2人目の大学院生が誕生する。
好評連載 呉澤森先生と高橋楊子先生の「弁証論治トレーニング」 |
前号に出題された症例を,読者が回答し,それを針灸と湯液の両方からお二人の先生にコメントをしていただくコーナー。お二人のコメントがていねいでやさしく,しかも啓発性が高いので大変評判がよい。毎回17人くらいが代わる代わる回答を寄せられる。ぜひ皆さんも奮起して挑戦されてみてはどうか。
中医学は概念が規格化されていて単純であり,論理が一貫しているので,学びやすい――これは,中医学を評価するとき,いつも指摘される長所である。しかし,この特徴は,新中国になってから編纂された統一教科書を中心とする現代中医学の1つの側面を示しているにすぎない。長い歴史をたどってきた中医学は,本来的にそのように単純なものではなく,むしろ,これ以上にないほど複雑で,多様性に富んだ学問である。
最近,南京中医薬大学の黄煌教授の『中医伝統流派の系譜』(当社刊)が出版され,同教授の論文が『中医臨床』に掲載されたことなどを契機に,中医学の多様性がしばしば話題にのぼるようになってきた。「各家学説」が語られる。それはとりもなおさず,中医学の本質をもう一度問い直すことにつながる。現代中医学とは何なのか,はたしてこれで現実の臨床問題がすべて解決するのかどうか,どうすれば教科書中医学から臨床中医学へ発展できるのか,われわれはどう学んでゆくべきか,などさまざまな問題が提起されはじめている。問題意識が非常に深まってきたと思われる。
本論文は,中医学の流派が形成された理由と必然性を理路整然と解説する。中医学の本質を認識するためにぜひ読んでいただきたい文章である。