凡 例
一.本書の内容
本書はいまから『金匱要略』を学習しようとしている人はもちろん、『傷寒論』と『金匱要略』はあくまでも一体不可分のもので、両者は同時に学習すべきだと考えている人のご要望にも添えるように、前に出版した『傷寒論を読もう』(髙山宏世、東洋学術出版社、二〇〇八年)の続篇あるいは姉妹篇として、新たに執筆・編集したものである。
内容は臓腑経絡先後病脈証第一より婦人雑病脈証并治第二十二まで、全二十二篇、四百三十八箇条である。
従来の参考書では後世の衍文として省略されがちであった条文や、附方も収録した。
二.原 典
『金匱要略』の条文および番号は日本漢方協会学術部編『傷寒雑病論』(『傷寒論』『金匱要略』)三訂版(東洋学術出版社、二〇〇〇年)に拠った。
各条文は『傷寒論を読もう』と同じ基準に従い、仮名混じりの読み下し文とし、読み方・句読点・段落などについては必ずしも従来の参考書のそれには捉われず、一読して意味が取りやすい平易な文章となるように心がけた。常用漢字がある漢字は常用漢字を用いた。
なお、原典の明らかな誤りと思われる箇所については、『善本翻刻 傷寒論・金匱要略』(日本東洋医学会、二〇〇九年)を参考に適宜修正を加えた。
三.各篇の構成
各篇の冒頭に、その篇の内容を条文番号に従って短くまとめ、各条文に書かれている内容があらかじめわかるようにした。
四.使用漢字
条文の読み下し文、および解説にはなるべく原典の文字を用いたが、読みやすさを考慮して常用漢字やよく馴染んだ漢字に改めた。
五.処方図解
『傷寒論を読もう』で図解に示した処方は除き、『金匱要略』のなかから繁用される五十処方を選び、処方の要点を一頁の図解にまとめ、挿入した。
1、方意 その処方の性質・特徴あるいは主治する病態の病理機序などを
要約した。
2、方証 証候と同義で、その処方が用いられるべき症状・腹証・脈・舌の
所見などを記した。
適応証を鑑別するうえでのキーワードを「弁証の要点」として
箇条書きにして示した。
3、方解 処方の君臣佐使と、現代に用いられている標準的分量や、
構成生薬の性味や薬効などを記した。
4、臨床応用 その処方が臨床の場でどのような状況や疾病で
用いられるか、その一端をあげた。
六.各篇の総括
各篇の最後に、必ずしも条文番号の順には捉われず、その篇の内容を整理・要約して理解の便をはかった。