序
このたび,『中国刺絡療法』(原書名は『中国実用刺血療法』)が関係者の努力によって,翻訳出版される運びになったことは,鐵灸治療技術の幅を広げるためにも,また各種疾病の治療効果を拡大するためにも大きく役立つものと信じている。
そもそも刺血,刺絡,瀉血療法は,名称は異っていても人類の発展過程において,津の東西を問わず古くから行なわれてきた治療である。
中国の医学史をみても石携時代から尖った石の先で血を出す治療は行なわれてきた。これが「?石」といわれる鍼の基礎になった。
鍼灸治療の原典とされる『黄帝内経』のなかにも,刺血,刺絡は重要な手段の1つとして「血を取る」言葉が頻繁にあらわれる。
治療法は気血の補瀉には欠かせない治療法として,古くから行なわれてきたにもかかわらず,なぜか明治時代になって禁止されているかのようにうけとめられてきた。西洋医学崇拝の観念から,伝統のあるこの療法,特に鍼灸治療の一分野としての方法を無視されてしまったというしかない。
本治療法は,中国の研究では,非常に広範囲な疾患に利用されていて,日本で今日まで見すごされてきたのが不思議な位である。消毒を完全に行い感染を予防する限り危険な治療でないことは明白である。
この書が多くの鍼灸師の方々に読まれて,刺血治療が一般化されることを願って序と致します。
日本刺絡学会会長
森 秀太郎
平成11年5月30日