あとがき
中医弁証論治の臨床専門書である前書『「証」の診方・治し方』第1巻が,発行以来多くの読者にご愛読いただいていることに感謝しています。そして,読者の期待に応えるべく,私たちは第2巻を発行する運びとなりました。第2巻をこれほど早く順調に出版できることについて,まずは執筆者の立場から,熱心な読者と東洋学術出版社の山本勝司会長,井ノ上匠編集長,編集者の森由紀様およびそのほかの協力者の皆さまに心より感謝を述べたい。
30年前,私は北里東洋医学総合研究所の招待で来日しました。当時も,医師・鍼灸師・薬剤師で中医学に関心のある人は居たものの,今ほど増えるとは予想できませんでした。最近では,中医学の日本への導入・普及が進んでいることを実感しています。
中医学の学習は,まず中医学の基本理論を深く理解することが重要です。中医学の書籍は漢字が多く,日本の漢字と似ていることも多いですが,中医学理論の勉強を軽くみてはいけません。しっかりと中医学の基礎理論を勉強したうえで,次のステップとして臨床実践があるのです。臨床実践を積み重ねるうちに,中医学の基礎理論の奥深さに感心し,それを体得できるようになることでしょう。『「証」の診方・治し方』で紹介した症例は,日常的に遭遇する病気ですから,皆さんの診療にも参考価値があるのではないでしょうか。同じ病気でも,個人の体質や病状によって,違う証が立てられる可能性があります。中医弁証は,初診日の第1回目の弁証が,病気を治すための弁証のスタートですが,病状の変化・体質の変化に伴い,また新たな証が立てられることがよくあります。病気を治す全過程において,弁証論治は継続しているのです。
『中医臨床』誌では,弁証論治の専門コーナーである「弁証論治トレーニング」が読者の熱心な応援により順調に続いています。これからもよろしくお願いします。また,本書の不十分な所については,ご批判・ご鞭撻をいただければ幸いです。
2019年春 呉澤森
2019年春 高橋楊子