▼書籍のご案内-後書き

『「証」の診方・治し方2 -実例によるトレーニングと解説-』あとがき

 
 
あとがき
 


 中医弁証論治の臨床専門書である前書『「証」の診方・治し方』第1巻が,発行以来多くの読者にご愛読いただいていることに感謝しています。そして,読者の期待に応えるべく,私たちは第2巻を発行する運びとなりました。第2巻をこれほど早く順調に出版できることについて,まずは執筆者の立場から,熱心な読者と東洋学術出版社の山本勝司会長,井ノ上匠編集長,編集者の森由紀様およびそのほかの協力者の皆さまに心より感謝を述べたい。
 30年前,私は北里東洋医学総合研究所の招待で来日しました。当時も,医師・鍼灸師・薬剤師で中医学に関心のある人は居たものの,今ほど増えるとは予想できませんでした。最近では,中医学の日本への導入・普及が進んでいることを実感しています。
 中医学の学習は,まず中医学の基本理論を深く理解することが重要です。中医学の書籍は漢字が多く,日本の漢字と似ていることも多いですが,中医学理論の勉強を軽くみてはいけません。しっかりと中医学の基礎理論を勉強したうえで,次のステップとして臨床実践があるのです。臨床実践を積み重ねるうちに,中医学の基礎理論の奥深さに感心し,それを体得できるようになることでしょう。『「証」の診方・治し方』で紹介した症例は,日常的に遭遇する病気ですから,皆さんの診療にも参考価値があるのではないでしょうか。同じ病気でも,個人の体質や病状によって,違う証が立てられる可能性があります。中医弁証は,初診日の第1回目の弁証が,病気を治すための弁証のスタートですが,病状の変化・体質の変化に伴い,また新たな証が立てられることがよくあります。病気を治す全過程において,弁証論治は継続しているのです。
 『中医臨床』誌では,弁証論治の専門コーナーである「弁証論治トレーニング」が読者の熱心な応援により順調に続いています。これからもよろしくお願いします。また,本書の不十分な所については,ご批判・ご鞭撻をいただければ幸いです。


 

2019年春 呉澤森


  
 
 このたび,『「証」の診方・治し方』の第2巻が発刊される運びとなりました。
 本書は,『「証」の診方・治し方』第1巻(2012年12月発行)と同じく,季刊『中医臨床』の「弁証論治トレーニング」のコーナーに長い間掲載されてきた多くの症例から,新たに30の症例を厳選しました。各症例に対して,症状分析にもとづき病因病機を推理しながら弁証する方法,治療方法と経過,そして迷いやすい点についてのアドバイスをまとめ,さらに弁証ポイントと病因病機図を加筆しました。
 中医治療の素晴らしさは,弁証論治により疾患を根本から治療できることです。病の原因を取り除き,目の前の患者が一刻も早く苦痛から解放されることは,臨床家の一番の願いでしょう。しかし,授業や本から学び得た知識だけでは,良い臨床家になるまでの道のりは長く,その距離を縮めるためには常に実践的な訓練をしながら臨床経験を積むしかありません。
 その意味でも,本書と第1巻に紹介された症例は,皆さまに実践的な訓練の場を提供しているといえるでしょう。本書に書かれた弁証論治の手順・経過などを見ながら勉強してもよいし,また症例をもとに自分なりの分析・弁証・治療(中薬・方剤・配穴・手技など)を考えてから,その解説と比較してもよいと思います。たくさんの症例トレーニングを繰り返すことによって,皆さまの中医学の臨床力は着実に進歩することでしょう。
 おかげさまで,2018年12月に本書の元となる『中医臨床』の「弁証論治トレーニング」は第100回を迎えました。これも皆さまのご愛読・ご支持の賜物と深く感謝致しております。振り返ってみれば,私の力不足で,また拙いところもありましたが,皆さまに何らかのヒントを示すことができたのであれば幸いです。
 最後に,本書の発刊にあたりまして,東洋学術出版社社長の井ノ上匠様のご助言と,編集者の森由紀様に多大なご尽力をいただきましたことに,心より感謝申し上げます。


 

2019年春 高橋楊子