あとがき
《医学衷中参西録》もようやく最終巻として上梓することができた。本書は薬物講義・医論・書簡を中心とした内容で張錫純の最晩年に書かれ,臨床家のみならず教育者としての彼の実像を伺うことができてまことに興味深い。翻訳は池尻研治が行い,研究会の場で会員諸氏と討論を行った。はじめて張錫純に注目されて,実臨床でその処方を駆使された伊藤良先生は鬼籍に入られ,森雄材・竹原直秀・浜田富三雄諸先生ら一緒に討論をした会員たちも黄泉に旅立たれた。本文中では《素問》《霊枢》をもとに論じられた個所も多く,故・竹原直秀先生の訳書(未発表)を参考にした。当時の人びとの考え方や,手紙文に対する知識が不十分で,読みにくいところや誤解があることを危惧するが,間違いなどがあればご指摘をお願いしたい。物故会員を含む多くの会員,とりわけ東洋学術出版社の井ノ上匠社長はじめ関係者の方々の多大なる御協力で本書が完成できたことを心より感謝申し上げる。