▼書籍のご案内-後書き

『朱氏頭皮針[改訂版]』

あとがき


 今年3月,日本中国伝統医学研究院とリー針灸治療院創立20周年の際,本書の著者である朱明清先生を日本にお招きし,「朱氏頭皮針講演会」を挙行した。約120余名の中日の専門家,学者などが朱明清先生の精彩な講演を聴いた。参加者の方々から,近年得がたい盛会と称され,興奮をさそう衝撃的でユニークな講演会となった。
 私と朱先生は20数年前,ともに北京の国立中国中医研究院で臨床と教育にあたっていた。
 私はかつて中国中医研究院大学院の方薬中教授ら多くの名家について長年学習し,多くを学んだ。各家の長所を学んだ後,朱氏頭皮針には独自の境地があることを感じとった。朱先生から頭皮針を学び,その極意を会得し,臨床で良好な治療効果をおさめることができた。
 朱明清先生は,アメリカ籍の中国人で「朱氏頭皮針」の創始者である。
 1987年11月,中国の北京で,第1回「世界針灸連合会成立大会」で,朱明清先生は頭皮針をデモンストレーションされた。2名の北京軍区総合病院神経内科から,急性期(回復期)中風患者が担ぎ込まれた。1名は40日前に脳梗塞にかかった患者で,当時は左片麻痺で,筋力が1から2。15分針灸した後,ひとりで立ち上がると同時に,前へゆっくりと歩くことができた。もう1人は脳溢血になり1カ月余りの患者で,右片麻痺,筋力0。30分刺針後,軽く支えられて立ち上がると同時に,足を動かし動くことができた。これは参加した56カ国の600余名の代表を震撼させ,「神針の朱」と称賛された。
 私は1988年に来日し,1989年,後藤学園に朱先生を紹介し,講演会が催された。さらに東洋学術出版社に「朱氏頭皮針」を推薦し,出版の協力も行った。同時に,この神秘的で針麻酔後の第二次針灸革命の意義をもつ朱氏頭皮針医学を日本に紹介した。
 1989年,朱先生は台湾において,高い医術により各界を震撼させ,朱明清旋風を巻き起こした。この後,彼は1本の針をたよりに,ヨーロッパ,アメリカ,アジア,オセアニア諸国を歴訪し,畢生の力で中国針灸医術が,最も古く,最も現代的で,最も科学的な全科医学であり,現在最も偉大な医学でもあることを証明した。
 1990年,朱先生はアメリカのカリフォルニア州に定住した。現在,アメリカ朱氏頭皮針医学教育基金会の会長,「朱氏針灸神経医学センター」の首席顧問および主任医師,「朱氏頭皮針研究教育基金会」の主席などの職務についている。
 23年来,私は日本の各地で頭皮針療法を指導し,臨床各科の応用に重きをおき,いつも満足する効果を上げてきた。
 20余年の時が流れ,再び朱教授を東京にお招きし,朱氏頭皮針医学の新たな進展を教えていただいた。ここに再び,朱氏頭皮針医学の,救急,急性,重症,麻痺治療における精華のありかを知ることができた。
 「刺針に導引を加える」のが,朱氏頭皮針医学である。治療では針到,意到,気到,導引到,効果到の域に達するのを不二の教えとする。この新刊『朱氏頭皮針・改訂版』の出版は,朱先生の50年にわたる臨床の精髄を十分に表している。
 このたび,朱先生から新刊の序を書くよういわれたが,身の丈を越えており,この針の学習,教育,臨床応用や,「朱氏頭皮針」医学からの体得を少しだけお話して,あとがきにかえさせていただきたい。
 私は朱先生より,日本での「朱氏頭皮針」の講義,研究などを委託され,その責任は非常に重いと痛感している。皆さんとともに「朱氏頭皮針」が日本,人類の医学実践に貢献できることを願い努力したい。
 最後に,長年にわたり私への支持と協力,信頼を寄せていただいた後藤修司先生,兵頭明先生,山本勝司先生,井ノ上匠先生,および各界の友人に心からの感謝を申し上げたい。

日本中国伝統医学研究院院長
  リー針灸治療院
日本朱氏頭皮針研究会会長
厲 暢(リー・チョウ)
2013年4月10日東京にて