あとがき
1999年に第2版を上梓して以来すでに12年を経過した。その間多くの医師・薬剤師が漢方薬を日常診療にごく普通に用いるようになったが,多くは西洋医学的な病名から方剤を選ぶような使われ方がなされてきたために,せっかく漢方薬をつかいながら十分にその長所をつかいきれていないように思われる。中医学は西洋医学とは別の視点からの疾患のとらえ方であり,生命体としての人体を別の角度から理解する有力な手段である。そのために中医学では弁証論治が重要視され,それに基づいて治療薬が選ばれる。せっかく漢方薬をつかう機会を得たなら,ぜひとも弁証論治にいたる考え方を学んでいただいて中医学の神髄にちかづいていただきたい。本書がその一助となるならこれにすぐる喜びはない。
中医学入門に記載する事項そのものも,時代によってさまざまに解釈されておりすべてが同じではないために学ぶものにとって混乱を来すところもある。臨床に役立つ矛盾のない理論の確立が引き続き望まれる。本書は現時点においてできるだけ矛盾のない,理解を得やすい記載を試みたつもりであるが,まだ未熟な点も多く今後も努力を続けていくつもりである。読者諸氏のさらなる検討と批判を仰ぎたい。
最後に,辛抱強く改訂原稿におつきあいいただいた東洋学術出版社・編集部の方に心より御礼,感謝を申し上げる。
神戸中医学研究会